大腸癌で「余命3ヶ月」と伝えられたとき、どんな症状が出て、どんなケアができるのか――多くの方が深い不安を抱えます。

この記事では、進行期に起こりやすい身体の変化や、痛み・吐き気といった症状への緩和ケア、在宅介護のポイントまで、優しくわかりやすくまとめました。
知っておくことで、必要以上の不安を抱かず、落ち着いて選択できる場面が増えていきます。まずは、一緒に「今できる安心」を丁寧に見つけていきましょう。
この記事のポイント
① 余命3ヶ月の大腸癌で起こりやすい身体症状と自然な経過を理解できる
② 痛み・吐き気・呼吸苦などへ緩和ケアで可能な対処法が分かる
③ 在宅介護やホスピス利用で家族が無理なく支えるためのポイントを知れる
④ 患者本人と家族の“心のケア”と前向きな選択肢が整理できる

筆者:癌サバイバーきのじー
2014:直腸ガン宣告〜、2016:一時ストーマ閉鎖手術〜以後排便障害で日々奮闘中、2022:狭心症心臓カテーテル手術、2025:肺がん転移と心筋梗塞。体はガタガタですがお酒と食べることは大好き。その昔トランペットとサラリーマンやってました。
★<詳しいプロフはこちら>
余命3ヶ月の大腸癌で起こりやすい“身体の変化”とは

◦体力の低下・倦怠感
◦食欲低下・体重減少
◦腹痛・骨盤内の痛みの増悪
◦出血・便通異常(便秘・下痢)
大腸癌が進行し、余命が3ヶ月と医師から伝えられる頃には、体の機能がゆっくりと弱まり、さまざまな変化が現れます。これは“病気が進んでいるから苦しんでいる”というよりも、体が自然なペースでエネルギーを温存しようとする反応でもあります。
ここでは、よくみられる身体症状を、できるだけ分かりやすくお伝えします。「こういう変化が出てもおかしくないんだ」と知ることで、本人も家族も不安が少し軽くなります。
体力の低下・倦怠感
結論として、最も多いのが「強いだるさ」と「体力の落ち込み」です。
病気の進行に伴い、体がエネルギーを作る力が弱まり、以前なら休めば回復した疲れも続きやすくなります。
- ベッドに横になっている時間が増える
- 少しの移動でも息が上がる
- 会話が短くなる、眠っている時間が増える
こうした変化はとても自然なもので、「無理に起こす」「歩かせる」必要はありません。

看護師やホスピスチームは、この“疲れやすさ”へのケアとして、体位調整やエネルギー節約の工夫を提案してくれます。
家族は、患者さんのペースに合わせてゆっくり寄り添うだけで十分です。
食欲低下・体重減少
食欲の低下は、終末期の大腸癌にほぼ共通してみられる変化です。胃腸の動きが弱まることで、食べたい気持ちが薄くなり、少量しか食べられなくなることがあります。
こうした状況が続くと家族は心配になりますが、食べられないことが“苦しみ”を増すとは限りません。むしろ、体が自然なリズムに移行しているサインと考えられます。無理に食べさせる必要はなく、少量・水分中心でも大丈夫です。
腹痛・骨盤内の痛みの増悪
大腸癌は腸や骨盤の周囲に広がると、鈍い痛みや締めつけられるような痛みが出ることがあります。痛みの程度には個人差がありますが、緩和ケア医は痛みを可能な限り和らげる薬の調整を行います。
- ガスが溜まったような腹部の張り
- じんわりと続く鈍痛
- 体勢を変えると楽になることもある
痛みが強まったと感じた時は、遠慮なく医療者に相談してよい段階です。モルヒネなどのオピオイドも適切な量であれば、“ぼーっとするだけ”ではなく痛みを和らげて生活を楽にする可能性があります。
出血・便通異常(便秘・下痢)
進行がんでは、腸の粘膜が弱くなるため少量の出血や、便通異常が起きやすくなります。これは不安に感じやすい症状ですが、非常に一般的です。
- ティッシュに血がつく
- 便秘と下痢を繰り返す
- 排便回数が不規則になる
便が出にくい時には、緩下剤の調整や水分摂取の工夫で改善することがあります。出血があっても、少量であれば慌てる必要のないケースも多いので、気づいた時は落ち着いて医療者に状況を伝えてください。
進行に伴ってみられる“臓器・全身症状”

◦腹水による膨満感・呼吸苦
◦腸閉塞の前兆と起きたときの症状
◦肝転移・肺転移による症状(黄疸・咳・息切れ など)
◦嘔吐・吐き気の悪化
大腸癌が進行し、余命3ヶ月ほどの段階になると、腸だけでなく他の臓器にも影響が出てきます。これは決して珍しいことではなく、病気の進行に伴う自然な変化です。
「なぜこうなるのか」を理解しておくことで、不安が少し和らぎ、ご家族も落ち着いて対処しやすくなります。

ここでは、特によく相談がある全身症状についてやさしく解説します。
腹水による膨満感・呼吸苦
腹水(ふくすい)とは、お腹の中に液体が溜まる状態のことです。大腸癌が肝臓や腹膜に広がると、体内の水分バランスが崩れ、徐々にお腹が張ってくることがあります。
主な変化としては、
- お腹がパンと張る
- 食事が入りにくくなる
- 横になると苦しく感じる
- 息がしづらいと訴える場合がある
腹水があると「見ていて苦しそう」と感じるかもしれませんが、緩和ケアでは**腹水を減らす処置(穿刺)**や、呼吸を楽にする体位調整などが可能です。「何もできないわけではない」ということを知っておくと心が軽くなります。
腸閉塞の前兆と起きたときの症状
進行した大腸癌では、腫瘍が腸を圧迫したり、腸の動きが弱ったりすることで腸閉塞(イレウス)が起こることがあります。その前兆を知っておくと、早めにケアにつなげられます。
前兆として多いのは、
- 強い腹部の張り
- いつもよりガスや便が出ない
- 食後の吐き気が増える
- みぞおちが重く痛む
腸閉塞が進むと、吐き気・嘔吐が強くなり、食事や水分がほとんど取れなくなることもあります。緩和ケアでは、胃管を使わない方法や薬の調整で苦痛をやわらげる選択肢もありますので、医療者に早めに伝えることが大切です。
肝転移・肺転移による症状(黄疸・咳・息切れ など)
大腸癌は肝臓や肺に転移しやすい特徴があります。余命3ヶ月の時期には、こうした転移による症状が気になってくる場合があります。
肝転移の場合に見られやすい変化:
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- 倦怠感が強まる
- 食欲低下
肺転移の場合に見られやすい変化:
- 咳が増える
- 少し動いただけでも息が切れる
- 胸の違和感
これらは身体が全力でがんと戦っているサインでもあります。医療的には症状を和らげる薬や、呼吸が楽になる工夫が行われますので、つらさを我慢せず相談して大丈夫です。
嘔吐・吐き気の悪化
進行がんに伴う吐き気は、腸閉塞の影響だけでなく、肝機能の低下、薬の副作用、体の代謝バランスの変化など複数の要因が関わります。
よくある訴えとして、
- 食べると気持ち悪くなる
- 吐き気で眠れない
- 口の中が常にムカムカする
こうした症状に対しては、制吐剤(吐き気止め)の種類を変えたり、点滴で調整したりと、緩和ケアでできる対策は複数あります。一人で抱え込まなくても大丈夫です。「吐き気は仕方ない」と思われがちですが、実は和らげられる可能性は十分あります。
余命3ヶ月からの“緩和ケア”でできる症状緩和

◦痛みを和らげる薬の種類(医療的に安全な範囲で説明)
◦吐き気・嘔吐への対策
◦腹水・呼吸困難へのケア選択肢
◦精神面へのサポート(不安・抑うつ)
余命3ヶ月という段階では、「治す治療」よりも「つらさを減らす治療」が中心になります。これは決して「もう何もできない」という意味ではなく、むしろ生活の質を保つためにできることが増える時期でもあります。ここでは、痛みや吐き気、呼吸苦などによく使われる緩和ケアの方法をわかりやすく解説します。患者さん本人もご家族も、「どうケアすれば少しでも楽になるのか」を把握できる内容です。
痛みを和らげる薬の種類(医療的に安全な範囲で説明)
強い痛みが出てくる場合には、オピオイドと呼ばれる痛み止めが使われることがあります。代表的なのは、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどです。これらは量を慎重に調整しながら使うことで、安全に痛みを和らげることが可能です。
- ずっと続く鈍い痛みには、持続的に効く薬を使用
- 急に強くなる痛みには、即効性の薬を追加
- 便秘などの副作用には対策が用意されている
「依存が心配」という声もありますが、終末期の痛み管理では過度に心配する必要はなく、**“その人らしく過ごすための大切な手段”**と考える先生が多いです。薬を使うかどうかは、本人と家族の希望を最優先に調整していきます。
吐き気・嘔吐への対策
吐き気はつらさを強めやすい症状のひとつですが、対処法はいくつもあります。原因によって使う薬が変わるため、医師や看護師が症状を見ながら調整します。
- 食べ物の匂いを避ける
- 水分を少量ずつ分けて摂る
- 吐き気止めを別の種類に切り替える
- 点滴で代謝バランスを整える
「どうせ何をしても無理」と感じるかもしれませんが、症状が軽くなるケースは多いので、相談する価値は十分にあります。本人が少しでも安心して横になれるような工夫を一緒に探していきましょう。
腹水・呼吸困難へのケア選択肢
腹水や呼吸苦は、患者さん本人も家族もとても不安になりやすい症状です。緩和ケアでは、無理のない範囲でできる選択肢があります。
- 腹水が多い場合は、「腹水穿刺(ふくすいせんし)」で抜くことも可能
- 横向きで寝る・頭を高くすることで呼吸を楽にする
- 乾燥対策やお部屋の湿度調整で呼吸の負担を減らす
- 酸素の利用も選択肢のひとつ
必ずしも病院に行く必要はなく、在宅医療でも対応できるケースが多いため、つらさを我慢する必要はありません。
精神面へのサポート(不安・抑うつ)
終末期には、身体だけでなく心のつらさが強まることがあります。孤独、不安、将来への戸惑いなど、どれも自然な感情です。
緩和ケアチームでは、
- 気持ちを吐き出す時間をつくる
- 心の負担を軽減する薬を調整する場合もある
- ご家族への心理的サポートも行う
「泣いてはいけない」「弱音を言ってはだめ」そんなことはありません。安心して話せる人がいるかどうかで、心の軽さは大きく変わります。医療者やホスピススタッフは、患者さんだけでなくご家族の支えにもなってくれます。
在宅での介護と看取りの準備

◦在宅ホスピス・訪問診療との連携
◦家族が行いやすいケア(体位調整・清潔ケア など)
◦緊急時に備えておくべきポイント(出血・腸閉塞・痛みの急変)
余命3ヶ月という時期は、在宅へ戻るか、施設やホスピスを利用するかを検討するタイミングになることもあります。どの選択も尊重されるべきもので、「どれが正しい・間違い」というものはありません。ここでは、在宅で介護や看取りを行う際に、家族の不安が少しでも軽くなるようなポイントを丁寧に整理します。
在宅ホスピス・訪問診療との連携
在宅で過ごす時間が増えるほど、医師と看護師が自宅へ来てくれる訪問診療・訪問看護の存在が大きな支えになります。
訪問医療でできることの一例:
- 痛みや吐き気などの症状調整
- 必要に応じた点滴、薬の処方
- お身体の清潔ケア
- 緊急時の対応相談
- 家族のメンタルサポート
家にいながら医療を受けられるため、「病院に行けない」という不安を抱えずに済みます。医師は、無理のない範囲で本人と家族の希望を優先してくれるので、「どこまでお願いしていいのか」と気負わなくても大丈夫です。
家族が行いやすいケア(体位調整・清潔ケア など)
在宅介護は、特別な技術が必要な場面もありますが、家族ができるケアもたくさんあります。無理のない範囲で行えば十分です。
・ 体位調整
横向きにする、上半身を少し起こすだけでも、呼吸や痛みが楽になることがあります。
・ 清潔ケア
口の中を湿らせるスポンジ、体を温かいタオルで拭くなど、心地よさが大きく変わります。
・ 声かけや触れ合い
穏やかに話しかけたり手を握るだけで、安心感を与えられることがあります。
「ちゃんとできているのかな」と不安になる方が多いですが、看護師がやり方を丁寧に教えてくれますし、完璧である必要はありません。少しのケアでも大きな愛情として伝わります。
緊急時に備えておくべきポイント(出血・腸閉塞・痛みの急変)
終末期には予測しづらい症状の変化が起こることがあります。ただし、事前に知っておくことで慌てずに済みます。
よくある緊急場面:
- 便が出なくなる、腹部が急に張る(腸閉塞の可能性)
- 突然の強い痛み
- 便やおしり周囲からの出血
- 意識がぼんやりする
これらが起きたときは、焦らず訪問診療や緊急相談窓口に連絡すれば大丈夫です。訪問医は、在宅でも可能な対処法を提示してくれます。
また、家族がすべて抱え込む必要はありません。「どうしていいかわからない」ときに頼れる場所を確保しておくことも、立派な準備のひとつです。
食事・栄養でできる“無理のないサポート”

◦食べられない時の考え方
◦食事が喉を通りやすくなるポイント
◦胃腸の負担を減らす食事例
余命3ヶ月の大腸癌では、食欲が落ちたり食事量が急に減ったりすることがとても多くみられます。これは「病気が悪くなった証拠」というよりも、体が自然に省エネ状態に切り替わっているサインでもあります。家族としては「少しでも食べてほしい」と思いますが、無理に食べさせることが患者さんの負担になる場合も少なくありません。この章では、必要以上にがんばらなくてもよい“穏やかな食事ケア”を整理していきます。
食べられない時の考え方
終末期の食欲低下は、ほとんどの患者さんに起こる自然な変化です。病気による代謝の変化・腸の動きの低下・腹水による圧迫など、さまざまな要因が重なって「食べたい気持ち」が薄くなっていきます。
家族が知っておくと安心なポイント:
- 食べない=苦しい、ではない
- むりに食べさせると、かえって吐き気や腹痛につながることも
- 食べる量が減っても、必要以上に心配しなくてよい
「食べないのはつらいサインではなく、体の自然な変化」と理解できるだけで、家族の心の負担はかなり軽くなります。
食事が喉を通りやすくなるポイント
本人が“食べたい気持ちが少しでもある”ときには、ちょっとした工夫で食べやすくなる場合があります。
- 温かいスープや味噌汁など「液体に近いもの」を中心に
- 少量をゆっくり、本人のペースに合わせて
- 匂いの強いものは避け、さっぱりした味を選ぶ
- 口の中を潤すケア(口腔ケア)で飲み込みを助ける
「これなら入りそうかな?」と本人が選べる形にしてあげると、負担が少なくなります。食べる量が少なくても、食事が“心地よい時間”になるだけで十分です。
胃腸の負担を減らす食事例
具体的に、負担が少なく受け入れやすい食べ物としては、次のようなものがあります。
- おかゆ・雑炊
- ヨーグルト・プリン
- ポタージュ・スープ類
- 茶碗蒸し
- 柔らかい果物(バナナ・桃など)
- 経口補水液・スポーツドリンク(飲める範囲でOK)
「形のある食事」にこだわる必要はありません。飲めるもの、口にできるものが少しでもあれば十分です。もし水分すら摂れない日が続いても、終末期ではよくあることで、医療者に相談しながら負担のない方法を選んでいけば大丈夫です。
家族が知っておきたい“心のケア”

◦患者本人への声かけのコツ
◦介護者・家族のメンタルサポート
◦後悔しないためのコミュニケーション
余命3ヶ月という現実に向き合うとき、身体の症状だけでなく“心のつらさ”が表に出てくることがあります。それは患者さん本人だけでなく、そばで支える家族も同じです。ここでは、心のケアで意識しておくと安心につながるポイントをまとめました。誰かのつらさを「軽くしてあげよう」とがんばりすぎる必要はなく、お互いが少しずつ心を休めながら前に進める方法をお伝えします。
患者本人への声かけのコツ
余命を意識すると、患者さん本人は「迷惑をかけている」「重荷になっている」と感じやすくなります。そのため、声のかけ方ひとつでも気持ちが大きく変わることがあります。
心が軽くなりやすい声かけ例:
- 「無理しなくて大丈夫だよ」
- 「いてくれるだけで安心だよ」
- 「何かつらいことがあったら言ってね」
逆に、励ましのつもりでも、
- 「がんばって食べて」
- 「もっと動いたほうがいいよ」
という言葉は、負担に感じることがあります。大切なのは“何をするか”よりも、“そばにいる姿勢”です。患者さんが口数が少なくても、黙って手を握るだけで十分なケアになります。
介護者・家族のメンタルサポート
家族はどうしても「自分がしっかりしなきゃ」と思いやすく、気づかないうちに心の疲れが積み重なっていきます。介護が長く続くほど、家族のメンタルケアは欠かせません。
家族が意識しておくとよいポイント:
- 一人で抱え込まないこと
- 訪問看護に気軽に相談してよい
- “つらい”と感じていい
- 休む時間をつくるのは立派なケアの一部
緩和ケアチームやホスピススタッフは、家族の涙や不安も支えてくれます。「弱音を見せてはいけない」と思う必要はありません。家族が心をすり減らさないことが、結果的に本人の安心にもつながります。
後悔しないためのコミュニケーション
終末期に近づくと、「もっと何かできたのでは」と後悔の気持ちが生まれやすくなります。しかし、コミュニケーションを意識することで、後悔の少ない穏やかな時間を過ごせる方も多いです。
意識しておくとよい関わり方:
- 本人が話したい時にゆっくり聞く
- 「ありがとう」を伝える習慣をつくる
- 過去ではなく“今”の気持ちを大切にする
- 無理に明るく振る舞わなくてもよい
会話が減っても、ただ同じ空間で過ごすだけで安心できる方は多いです。「この時間が大切なんだ」と思えると、気持ちが少し柔らかくなります。
医師や在宅ホスピスに相談すべき優先事項

◦薬の調整について
◦症状悪化のサイン
◦エンディングノート・医療方針・延命治療の確認ポイント
余命3ヶ月と告げられたあと、多くのご家族が感じるのは「何を相談すればいいのかわからない」という戸惑いです。医師やホスピスのスタッフは、治療だけでなく“生活の困りごと”にも寄り添ってくれます。ここでは、特に相談したほうが安心につながるポイントをわかりやすくまとめました。「こんなこと聞いていいのかな?」と遠慮する必要はありません。
薬の調整について
症状が変化しやすい時期だからこそ、薬の調整はとても重要です。痛み止めや吐き気止めなどは、症状に合わせて細かく変えることができるため、以下のような場面ではすぐ相談して大丈夫です。
- 痛みのタイプが変わった、強くなった
- 吐き気や嘔吐が増えてきた
- 眠気が強すぎて生活に支障が出ている
- 副作用が気になる
- 効果が出ていない気がする
薬の変更や追加は「つらさを我慢しなくていい」ための大切な手段です。ホスピス・訪問診療の医師は、身体の状態と生活スタイルの両方を見ながら“ちょうどよい量”を一緒に探してくれます。
症状悪化のサイン
終末期は、前日に落ち着いていた症状が翌日には変わっている、ということも珍しくありません。以下のような変化が見られたときは、早めの相談がおすすめです。
- 食事量が急激に減る
- 呼吸が浅くなる、息苦しさが強まる
- お腹の張りが急に強くなる(腸閉塞の可能性)
- 痛みが突然強くなる
- 意識がぼんやりする時間が増える
早めに伝えることで、薬の調整や緩和ケアの介入がしやすくなり、本人の負担を少しでも減らせる可能性があります。
エンディングノート・医療方針・延命治療の確認ポイント
重いテーマではありますが、医療の方針を確認しておくことは家族の迷いや不安を大きく減らします。決して“冷たい話”ではなく、患者さんが望む形で過ごせるようにするための思いやりの対話です。
確認しておくとよい内容:
- 最後をどこで迎えたいか(自宅・ホスピス・病院など)
- 延命治療をどこまで望むか
- 苦痛緩和を最優先にするかどうか
- 心配ごとや不安についてのメモ
- 家族に伝えておきたいこと
医師は、こうした話をする場面で“正解”を押しつけることはありません。患者さんと家族の希望を尊重しながら、一緒に考えるスタンスで寄り添ってくれる方がほとんどです。
直腸癌サバイバー“きのじー”からのメッセージ

◦不安な時に大切にしてほしいこと
◦家族が支えになるためのヒント
◦終末期でも「選べるケア」はあること
ここまで、余命3ヶ月の大腸癌で起こりやすい症状やケアの方法をお伝えしてきました。私自身、直腸癌の治療を経験し、終末期を迎える仲間を多く見てきました。その中で感じたのは、「身体が弱っていくこと=その人らしさが消える」というわけではないということです。どんな状態でも、患者さんの中には確かに“その人自身”がいます。
ご家族も、決して孤独ではありません。ここでは、私きのじーの経験と、支えてきた方々への思いから生まれたメッセージを届けます。
不安な時に大切にしてほしいこと
終末期の不安は、「先が見えない」「自分がどうなるのか分からない」というところから生まれます。これは誰にでも起こる自然な感情です。
私がお伝えしたいのは、
- 不安をゼロにしようとしなくていいこと
- 一日一日を“その人のペース”で過ごすことが心の安定につながること
- つらいときは医療に頼っていいこと
不安な気持ちがあるからこそ、人は穏やかな時間を大切にできるのだと、多くの患者さんから教わりました。完璧でなくて大丈夫です。今できることを、ひとつずつ。
家族が支えになるためのヒント
家族は「どう支えればいいんだろう?」と迷うことが多いですが、実は患者さんが望んでいるのは、特別なケアよりも**“安心できる存在がそばにいること”**です。
- 隣でテレビを見ている
- 手を握ってあげる
- 目が合ったら軽く笑いかける
- その人のペースに合わせて静かに過ごす
これだけでも、「一緒にいる」という大きな力になります。
私が見てきたご家族の多くは、「何もできていない」と言いながら、患者さんにとっては十分すぎるほどの支えになっていました。
終末期でも「選べるケア」はあること
余命3ヶ月という段階でも、ケアの選択肢は思った以上にあります。
- 痛みのコントロール方法
- 吐き気や呼吸苦への対処
- 在宅かホスピスかの選択
- 心のケアの受け方
どれを選ぶかで生活の質が大きく変わるケースもあります。
「もう選択肢はない」と思ってしまうと視野が狭くなりますが、実際には医師・看護師・ホスピスチームと一緒に検討できることはたくさんあります。
そして何より大切なのは、
“本人と家族がどんな過ごし方を望むか”
ということです。
その答えは、人によってまったく違います。
どうか焦らず、ゆっくり相談しながら決めていってください。
【総括とまとめ】

-
大腸癌の余命3ヶ月では、身体の自然な変化として、痛み・倦怠感・食欲低下・呼吸苦などが現れやすいことを解説しました。
-
悩みの本質は「症状そのもの」よりも、「どう支えればいいのか分からない不安」にあることを整理しました。
-
緩和ケアでは、痛み止め・吐き気止め・腹水や呼吸苦の対処など、生活を楽にできる方法が複数あることを学べます。
-
在宅医療やホスピスとの連携は、患者さんと家族の負担を減らし、穏やかに過ごす選択肢を広げる価値があります。
-
行動しないままだと、“つらさを我慢し続ける日々”になってしまうため、気づいた変化を早めに医療者へ伝えることが大切です。
-
小さな一歩でも、患者さんと家族の「その人らしい時間」を守ることにつながります。迷ったときは、一人で抱えず相談することから始めてみてください。
私のYouTubeチャンネルもよろしくです!↓

※当サイトではアフィリエイト広告を利用しています

