私は先日、心筋梗塞を経験しました。しかし予後のケアとして運動に制限が付くなど不安要素も少なくありません。
狭心症のときと違い、心筋梗塞では運動への向き合い方が変わるため、戸惑うのはとても自然なことです。

この記事では、心筋梗塞後に運動制限がかかる理由や、安全に体を動かすための考え方を、専門的な視点と体験に寄り添いながら解説します。
まずは正しい知識を知るところから、一緒に安心への一歩を踏み出していきましょう。
この記事のポイント
① 心筋梗塞後に運動制限がかかるのは、心臓を守り再発を防ぐための配慮です
② 狭心症と心筋梗塞では心臓の状態が異なり、運動への考え方も変わります
③ 現在は一生安静ではなく、段階的で安全な運動再開が重視されています
④ 主治医や心臓リハビリと相談しながら、自分のペースで回復を目指せます

筆者:癌サバイバーきのじー
2014:直腸ガン宣告〜、2016:一時ストーマ閉鎖手術〜以後排便障害で日々奮闘中、2022:狭心症心臓カテーテル手術、2025:肺がん転移と心筋梗塞。体はガタガタですがお酒と食べることは大好き。その昔トランペットとサラリーマンやってました。
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心筋梗塞のあとに「運動制限」がかかるのはなぜ?

● 壊死した心筋は元に戻らないと言われる理由
● 運動が心臓に与える負荷とは何か
● 心臓の状態と運動負荷の関係(整理表)
心筋梗塞を経験すると、多くの方が「なぜ狭心症のときよりも厳しく運動を制限されるのだろう」と戸惑います。
実際、退院後も「動きたいけれど怖い」「動かないほうがいいのでは」という不安を抱える方は少なくありません。

この運動制限には、再発予防と心臓を守るための、きちんとした医学的な理由があります。
壊死した心筋は元に戻らないと言われる理由
心筋梗塞では、心臓の血管が完全またはほぼ完全に詰まり、心筋に血液が届かなくなります。その結果、
とされています。
これは「治らない」という意味ではありません。
心臓はとても賢い臓器で、生き残った心筋が役割を分担し、全体としての機能を補おうとする力を持っています。
ただし、その過程で無理な負荷をかけると、残った心筋に過度なストレスがかかってしまうのです。
運動が心臓に与える負荷とは何か

運動をすると、体では次のような変化が起こります。
- 心拍数が上がる
- 血圧が上昇する
- 心臓がより強く、速く血液を送り出す必要が出る
健康な心臓であれば問題ありませんが、心筋梗塞後の心臓では、
ため、急な運動や強い負荷は、心臓に無理をさせやすいのです。
心臓の状態と運動負荷の関係(整理表)
| 状態 | 心臓の特徴 | 運動時のリスク |
|---|---|---|
| 健康な心臓 | 全体が均等に動く | 低い |
| 狭心症 | 血流が一時的に不足 | 中程度 |
| 心筋梗塞後 | 一部が壊死・瘢痕化 | 高くなりやすい |
このように、心筋梗塞後は「心臓の余力」が以前より少なくなっている可能性があるため、いきなり元の生活レベルに戻ることは勧められないのです。
ここまでの小まとめ
次の章では、なぜ狭心症と心筋梗塞で運動制限の考え方が違うのかを、もう少し具体的に見ていきます。
狭心症と心筋梗塞で運動制限の考え方が違う理由

● 血管が「狭い」状態と「詰まった」状態の違い
● 心筋への影響の違い(整理)
● 医師が慎重になるポイントの違い
● 狭心症の感覚で動いてはいけない理由
狭心症のときは「無理をしなければ運動しても大丈夫」と言われていたのに、心筋梗塞を起こした途端に運動制限が厳しくなり、戸惑う方はとても多いです。

この違いは、心臓のダメージの質そのものが異なることに由来しています。
血管が「狭い」状態と「詰まった」状態の違い
狭心症と心筋梗塞は、どちらも心臓の血管(冠動脈)が原因ですが、状態は大きく異なります。
この違いは、心筋への影響として次のように現れます。
心筋への影響の違い(整理)
| 病名 | 血流の状態 | 心筋への影響 | 回復の可能性 |
|---|---|---|---|
| 狭心症 | 一時的に不足 | 一過性の虚血 | ほぼ完全に回復 |
| 心筋梗塞 | 長時間遮断 | 心筋壊死 | 瘢痕として残る |
狭心症では、発作が治まれば心筋は再び元の状態に戻ります。一方、心筋梗塞では**「戻らない部分が残る」**ため、運動への考え方が慎重になるのです。
医師が慎重になるポイントの違い
医師が心筋梗塞後に運動制限を設けるのは、「動かせないから」ではなく、合併症や再発を防ぐためです。

特に注意されるのは次の点です。
心筋梗塞後は、運動をきっかけに
といった可能性があるため、「安全域」を確認しながら段階的に進める必要があります。
狭心症の感覚で動いてはいけない理由
多くの方が「狭心症のときは歩けていたから大丈夫」と考えがちですが、心筋梗塞後は状況が変わっています。
- 痛みが出ない=安全、とは限らない
- 自覚症状がなくても心臓に負担がかかることがある
- 無理をした影響が数時間〜翌日に出る場合もある
そのため、心筋梗塞後の運動は「感覚任せ」ではなく、医師の評価をもとにした計画的な再開が重要になります。
ここまでの小まとめ
次の章では、それでも今の医療では「一生絶対安静」ではない理由について、安心できる視点でお話しします。
心筋梗塞後でも「一生絶対安静」ではない理由

● 昔と今で変わった心筋梗塞後の治療方針
● 適度な運動が回復を助けるとされる背景
● 「動かない」ことのリスクも知っておく
心筋梗塞を起こしたあと、「これからは動かないほうがいいのでは」「一生、安静にして過ごすしかないのでは」と感じる方は少なくありません。
ですが、現在の医療では心筋梗塞後=絶対安静を続ける時代ではなくなってきています。

そこには、治療の進歩と多くの研究の積み重ねがあります。
昔と今で変わった心筋梗塞後の治療方針
以前は、心筋梗塞後は長期間の安静が基本とされていました。
しかし現在では、次のような理由から考え方が変わっています。
特に大きいのは、早期に血流を再開できるようになったことです。これにより、
- 心筋の壊死範囲を最小限に抑えられる
- 心臓機能が以前より保たれやすくなった
といった変化が起きています。
治療方針の変化を整理
| 時代 | 基本方針 | 課題 |
|---|---|---|
| 以前 | 長期安静 | 筋力低下・生活機能低下 |
| 現在 | 早期離床+段階的運動 | 無理のない管理が必要 |
適度な運動が回復を助けるとされる背景

まったく動かない生活が続くと、心臓だけでなく体全体に影響が出てきます。
- 筋力や体力が低下する
- 血流が悪くなり、動脈硬化が進みやすくなる
- 気分の落ち込みや不安が強くなる
そのため現在は、心臓に過度な負担をかけない範囲で体を動かすことが、回復に役立つ可能性があると考えられています。
心臓リハビリでは、
を行い、安全性を確保します。
「動かない」ことのリスクも知っておく
運動制限=動かさない、ではありません。
実は、過度な安静にも次のようなリスクがあります。
そのため重要なのは、
**「動くか・動かないか」ではなく「どう動くか」**という視点です。
ここまでの小まとめ
次の章では、**「では、いつから運動を始めていいのか?」**という、もっとも気になる疑問に進みます。
心筋梗塞後、運動はいつから再開できるの?

● 急性期・回復期・維持期という考え方
● 退院後すぐに動いてはいけないケースとは
● 「動きたい気持ち」と「安全」のバランス
「運動していいとは言われたけれど、具体的にいつから始めればいいのか分からない」
これは心筋梗塞を経験された多くの方が感じる、とても自然な疑問です。

運動再開の時期は一律ではなく、心臓の回復段階に応じて慎重に判断されます。
急性期・回復期・維持期という考え方
心筋梗塞後の経過は、一般的に次の3つの段階で考えられています。
心筋梗塞後の回復ステージ
| 時期 | 目安 | 運動の考え方 |
|---|---|---|
| 急性期 | 発症〜入院中 | 安静中心・医療管理下 |
| 回復期 | 退院後〜数か月 | 低強度運動から開始 |
| 維持期 | 数か月以降 | 生活習慣としての運動 |
急性期は、心臓の状態がまだ不安定なため、ベッド周りの動作や軽い歩行が中心になります。
退院後は回復期に入り、医師の許可のもとで少しずつ運動を再開していく流れになります。
退院後すぐに動いてはいけないケースとは
すべての方が同じペースで進めるわけではありません。次のような場合は、運動再開を慎重に判断します。

このような場合、運動の開始時期や内容は個別に調整されます。
「動きたい気持ち」と「安全」のバランス
心筋梗塞後は、体力の低下や体重増加を防ぎたい一方で、「また何か起きたらどうしよう」という不安も強くなりがちです。
大切なのは、
- 自己判断で急に運動量を増やさない
- 「前よりできるようになった」を焦らない
- 小さな変化を積み重ねる
という姿勢です。
ここまでの小まとめ
次の章では、医師が「運動していいか」を判断する際に見ている具体的なポイントを解説します。
医師が「運動OK・まだNG」を判断する評価項目

● 心エコー・心電図・運動負荷試験で見るポイント
● 医師が特に注目するポイント(整理)
● ステント治療後に注意される点
● 検査だけでなく「日常の様子」も大切
心筋梗塞後に「もう少し様子を見ましょう」「このくらいなら動いて大丈夫ですよ」と医師から言われる背景には、感覚ではなく客観的な評価項目があります。

これは「怖がらせるため」ではなく、安全に回復へ進むための道しるべです。
心エコー・心電図・運動負荷試験で見るポイント
医師が運動の可否を判断する際、主に次のような検査結果を総合的に見ています。
主な評価項目
これらは「運動しても心臓が耐えられるか」を判断する材料になります。
医師が特に注目するポイント(整理)
| 評価項目 | 見ている内容 | 判断への影響 |
|---|---|---|
| 左室機能 | 心臓の押し出す力 | 低いと慎重 |
| 不整脈 | 脈の乱れ | 出現すると制限 |
| 血圧反応 | 運動時の上昇 | 急上昇は注意 |
| 自覚症状 | 息切れ・胸部違和感 | 重要なサイン |
ステント治療後に注意される点
ステント治療を受けた方は、「血管は広がったのだから動いていいのでは」と思いがちです。

しかし、医師は次の点も考慮します。
特に治療直後は、心臓自体のダメージがまだ回復途中であることが多く、見た目以上に慎重な判断が必要になります。
検査だけでなく「日常の様子」も大切
医師は検査結果だけでなく、次のような日常の変化も重要視します。
- 少し歩くだけで息切れしないか
- 夜間の呼吸苦やむくみはないか
- 疲れ方が極端でないか
こうした情報は、診察時に伝えることでより安全な運動計画につながります。
ここまでの小まとめ
次の章では、**「では、どのくらいの強さで運動すればいいのか」**という、実践に直結するポイントをお話しします。
心筋梗塞後に推奨される運動強度の目安

● 「息が切れない」が一つのサイン
● 心拍数・自覚症状を使った考え方
● 運動強度の目安(一般的な考え方)
● 「頑張りすぎ」が一番の落とし穴
「運動はしていいと言われたけれど、どこまで動いていいのか分からない」
心筋梗塞後の運動で一番悩みやすいのが、この**“強度の加減”**です。

実は、強すぎる運動よりも、安全な範囲で継続できる強度が大切とされています。
「息が切れない」が一つのサイン
心筋梗塞後の運動では、専門的な数値よりも自分の体の反応が重要な判断材料になります。
よく使われる目安は、次のような感覚です。
これは「トークテスト」と呼ばれ、話せる=負荷が強すぎないという考え方です。
心拍数・自覚症状を使った考え方

医師から具体的な目標心拍数を示される場合もありますが、自己判断で無理に数値を追いかける必要はありません。
運動強度の目安(一般的な考え方)
| 強度 | 体の感覚 | 目安 |
|---|---|---|
| 低強度 | 楽に会話できる | 安全域 |
| 中等度 | 少し息が弾む | 医師の指示下 |
| 高強度 | 会話が難しい | 原則避ける |
心筋梗塞後は、低〜中等度までを基本にすることが多く、特に初期は低強度が推奨されます。
「頑張りすぎ」が一番の落とし穴
真面目な方ほど、「早く元に戻りたい」「体力を取り戻したい」と頑張りすぎてしまう傾向があります。
注意したいサインとしては、
こうした場合は、強度が合っていない可能性があります。
ここまでの小まとめ
次の章では、どんな運動が心臓に負担になりやすいのか、避けたい動きについて具体的に見ていきます。
心筋梗塞後に避けたい運動・注意が必要な動き

● 急に力を入れる運動が負担になりやすい理由
● 心臓に負担がかかりやすい運動の特徴
● 日常生活で気をつけたい動作例
● 生活の中で意識したい工夫
● 運動を「怖がりすぎない」ことも大切
運動が回復に役立つ可能性がある一方で、心筋梗塞後には心臓に負担がかかりやすい動きも存在します。

「運動=全部ダメ」ではありませんが、内容の選び方がとても重要です。
急に力を入れる運動が負担になりやすい理由
心臓にとって特に負担になりやすいのは、短時間で強い力を必要とする動きです。これらは一気に血圧を上昇させ、心臓へ強い負荷をかけます。
注意が必要な運動・動作の例としては、
などが挙げられます。
心臓に負担がかかりやすい運動の特徴
| 動きのタイプ | 心臓への影響 | 注意点 |
|---|---|---|
| 瞬発系運動 | 血圧急上昇 | 原則避ける |
| 筋トレ(高負荷) | 心拍・血圧上昇 | 医師相談 |
| 長時間高強度 | 心筋疲労 | 段階調整 |
日常生活で気をつけたい動作例

運動だけでなく、日常の動作にも注意が必要です。
これらは「運動しているつもりがなくても」心臓に負担がかかる場面です。
生活の中で意識したい工夫
- 動作はゆっくり行う
- 息を止めない
- 体調が悪い日は無理しない
運動を「怖がりすぎない」ことも大切
避けたい動きがある一方で、動くこと自体を過度に恐れる必要はありません。大切なのは、
- 危険になりやすい動きを知る
- 安全な運動を選ぶ
- 不安なときは相談する
という姿勢です。
ここまでの小まとめ
次の章では、不安を抱えたまま一人で運動を始めなくていい理由についてお話しします。
不安を抱えたまま運動を始める必要はありません

● 主治医・心臓リハビリとの付き合い方
● 心臓リハビリを利用するメリット(整理)
● 自分のペースで回復していくという考え方
● 不安が強いときに意識したいこと
心筋梗塞を経験したあと、「本当は動いたほうがいいのは分かっているけれど、正直怖い」という気持ちを抱くのは、とても自然なことです。
無理にその不安を押し込めて一人で頑張る必要はありません。

安全に体を動かすための“支え”は、きちんと用意されています。
主治医・心臓リハビリとの付き合い方
心筋梗塞後の運動再開で、もっとも心強い存在が主治医と心臓リハビリテーションです。
心臓リハビリでは、
といったメリットがあります。
心臓リハビリを利用するメリット(整理)
| 項目 | 内容 | 安心につながる理由 |
|---|---|---|
| 医療管理 | 専門職が常に確認 | 異変にすぐ対応 |
| 個別調整 | 心臓の状態に合わせる | 無理を防げる |
| 心理面 | 不安を共有できる | 恐怖心が軽減 |
「こんなことを聞いていいのかな」と思うような小さな疑問こそ、遠慮なく伝えることが大切です。
自分のペースで回復していくという考え方

心筋梗塞後の回復には、明確な“正解のスピード”はありません。
- 他人と比べなくていい
- 昨日の自分より少し楽なら十分
- 立ち止まる日があっても問題ない
特に、過去に元気だった自分を知っているほど、「前と同じように戻らなければ」と焦りやすくなります。

しかし、心臓は静かに回復していく臓器です。
不安が強いときに意識したいこと
- 不調は我慢せず伝える
- 数字より体調を優先する
- 「できない日」も回復の一部と考える
ここまでの小まとめ
ここまで読んでくださった方は、**「心筋梗塞後の運動制限は、怖がらせるためではなく、守るためのもの」**だということが、少しずつ見えてきたのではないでしょうか。
総括とまとめ

🔵 心筋梗塞後になぜ運動制限がかかるのかを、医学的な背景と実際の生活に即して解説
🔵 運動制限の本質は「動かしてはいけない」ではなく、壊死した心筋を抱えた心臓を守るための配慮にある
🔵 狭心症と心筋梗塞では心臓の状態が異なり、同じ感覚で動くことがリスクになる場合があることが大切なポイント
🔵 現在の医療では、心臓リハビリや段階的な運動によって、安全に体力を取り戻す道が用意されていることが多い
🔵 無理をしてしまうと再発や体調悪化につながる可能性があり、焦らず正しい情報を知ることが結果的に近道になる場合がある
🔵 自分の心臓の状態を知り、主治医と相談しながら一歩ずつ進むことで、不安に振り回されない日常に近づいていける
ここまで読んでいただいた方は、「なぜ制限があるのか」「どう向き合えばいいのか」という霧が、少し晴れてきたのではないでしょうか。
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