心筋梗塞で入院していると、「もし急に容体が変わったらどうなるのだろう」と不安になることは自然なことです。
実は私はつい先日、肺がん転移手術で入院中の術後に心筋梗塞を併発しました。病院だったので何とか事なきを得た次第です。

この記事では、入院中に起こりやすい急変の原因やサイン、病院での対応、そして不安を減らすためにできることを、体験者の視点も交えてやさしく解説します。
まずは正しい知識を知るところから、一緒に確認していきましょう。
この記事のポイント
① 心筋梗塞は入院中でも急変することがあり、事前に知識を持つことが不安軽減につながる
② 急変には再梗塞や不整脈など複数の原因があり、小さなサインを見逃さないことが重要
③ 病院では急変を想定した体制が整っており、早めのナースコールが命を守る
④ 患者・家族・医療者が情報を共有することで、入院中のリスクは減らせる

筆者:癌サバイバーきのじー
2014:直腸ガン宣告〜、2016:一時ストーマ閉鎖手術〜以後排便障害で日々奮闘中、2022:狭心症心臓カテーテル手術、2025:肺がん転移と心筋梗塞。体はガタガタですがお酒と食べることは大好き。その昔トランペットとサラリーマンやってました。
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心筋梗塞で「入院中に急変する」とはどういう状態?

●急変とはどんな症状・サインを指すのか
●術後・治療中に急変が起こりやすい理由
心筋梗塞で入院していると、「もう治療は始まっているから大丈夫」と感じる方も少なくありません。
けれど実際には、治療や経過観察の最中でも体の状態が大きく変化することがあります。
ここでいう「急変」とは、突然命に関わる状態へ傾く可能性がある変化を指し、決して珍しいものではありません。

まずは、急変がどのような状態なのかを正しく知ることが、不安を減らす第一歩になります。
急変とはどんな症状・サインを指すのか
入院中の急変は、「いきなり意識を失う」といった極端なケースだけではありません。初期には小さな変化として現れることも多くあります。
よく見られるサインには、次のようなものがあります。
- 突然の強い胸の違和感や圧迫感
- 息苦しさ、呼吸が浅く早くなる
- 冷や汗、顔色が急に悪くなる
- 動悸や脈の乱れを自覚する
- 強い不安感や「何かおかしい」という感覚
これらは必ずしも全てが重篤とは限りませんが、心筋梗塞の既往がある入院患者では、重要なサインとして慎重に扱われます。
術後・治療中に急変が起こりやすい理由
心筋梗塞の治療後は、体が回復へ向かう一方で、不安定な状態が続くこともあります。

特に次のような背景が重なると、急変のリスクが高まりやすいと考えられています。
- 血管がまだ完全に安定していない
- 不整脈が起こりやすい時期である
- 手術やカテーテル治療による体への負担
- 痛み止めや心臓の薬の影響
つまり、入院中の急変は「治療が失敗した」という話ではなく、「回復途中に起こり得る変化」と理解することが大切です。この認識があるだけでも、異変を感じたときに早く行動しやすくなります。
入院中の心筋梗塞患者が急変する主な原因

●再梗塞・血栓の再形成
●不整脈(致死性不整脈を含む)
●心不全・ショック状態
●合併症や持病(肺疾患・感染症など)の影響
入院中に急変が起こる背景には、いくつかの医学的な要因が重なっていることが多くあります。
患者さん本人がどれだけ安静にしていても、体の内側では目に見えない変化が進んでいる場合があります。

ここでは、特に注意されている代表的な原因を整理してお伝えします。
再梗塞・血栓の再形成
心筋梗塞の治療では、詰まった血管を広げたりステントを入れたりしますが、治療後すぐに血管の状態が完全に安定するわけではありません。
次のような理由で、再び血流が悪くなることがあります。
- 血液が固まりやすい体質
- ステント内に血栓ができる
- 薬の効果が十分に出る前の時期
再梗塞は突然起こることも多く、胸痛の再発や急激な血圧低下として現れる場合があります。
不整脈(致死性不整脈を含む)
心筋がダメージを受けると、心臓の電気信号が乱れやすくなります。その結果、脈が極端に速くなったり、逆に遅くなったりすることがあります。
特に注意される不整脈の例としては、
- 心室頻拍
- 心室細動
などがあり、これらは早急な対応が必要になることがあります。

入院中に心電図モニターをつけているのは、こうした変化をいち早く捉えるためでもあります。
心不全・ショック状態
心筋梗塞によって心臓のポンプ機能が弱まると、全身に十分な血液を送れなくなることがあります。その結果、
- 血圧が下がる
- 呼吸が苦しくなる
- 意識がぼんやりする
といった症状が現れ、急変として扱われます。これは治療の経過中に徐々に進行する場合もあれば、急激に悪化するケースもあります。
合併症や持病(肺疾患・感染症など)の影響
心筋梗塞そのものだけでなく、もともと抱えている病気や入院中に起こる別の問題が、急変の引き金になることもあります。
- 肺炎などの感染症
- 慢性肺疾患による呼吸状態の悪化
- 腎機能の低下による体液バランスの乱れ
これらが重なることで、心臓への負担が一気に増し、状態が急激に変わることがあります。
入院中の急変は、決して一つの原因だけで起こるわけではありません。複数の要素が少しずつ重なった結果として起こることが多いため、「何が原因か」を知っておくことが、不安を減らし、早めの対応につながります。
次は、こうした急変の前に現れやすい危険なサインについて、もう少し具体的に見ていきます。
心筋梗塞の入院中に見られやすい「危険なサイン」

●胸痛以外に注意したい症状
●患者本人が気づきにくい変化とは
●家族・付き添いができる気づきポイント
入院中は医療スタッフが常に見守っているとはいえ、急変の前触れとなるサインは、必ずしも分かりやすい形で現れるとは限りません。
むしろ「少し変だな」「いつもと違う気がする」といった、あいまいな違和感から始まることも多いのが現実です。

ここでは、見逃されやすい危険なサインを整理してお伝えします。
胸痛以外に注意したい症状
心筋梗塞というと強い胸痛を思い浮かべがちですが、実際には胸の痛みがはっきりしないケースも少なくありません。特に入院中は、次のような症状が重要な手がかりになります。
これらは「よくある体調不良」と思われがちですが、心臓に負担がかかっているサインの可能性もあります。
患者本人が気づきにくい変化とは
入院中は安静にしている時間が長く、症状の変化に慣れてしまうことがあります。そのため、次のような変化は本人が軽く見てしまいがちです。
- 「なんとなく苦しいけど我慢できる」
- 「さっきより少しだるい気がする」
- 「不安だけど気のせいかもしれない」

こうした感覚的な変化も、医療者にとっては大切な情報です。
はっきり説明できなくても、違和感がある時点で伝えることが重要です。
家族・付き添いができる気づきポイント
面会時や付き添いの中で、家族だからこそ気づける変化もあります。例えば、
- 表情がいつもより乏しい
- 返事が遅く、ぼんやりしている
- 呼吸が苦しそうに見える
- 会話中に急に疲れた様子になる
こうした変化を感じたら、遠慮せず看護師に伝えて構いません。家族の一言が、早期対応につながるケースも少なくありません。
危険なサインに共通しているのは、「明確な痛みがなくても起こる」という点です。だからこそ、入院中は“小さな変化を大切にする”姿勢が、安心につながります。
次は、実際に急変が起こったとき、病院ではどのような初期対応が行われるのかを具体的に見ていきます。
急変が起きたとき、病院ではどんな初期対応が行われる?

●ナースコール後の対応フロー
●モニター・検査・緊急処置の流れ
●ICU・CCUへ移動するケースとは
入院中に急変が起きた場合、病院ではあらかじめ決められた手順に沿って、落ち着いて対応が進められます。
患者さんやご家族にとっては突然の出来事に感じられますが、医療現場では「想定内の事態」として備えが整えられています。

その流れを知っておくことで、いざというときの不安は少し和らぐはずです。
ナースコール後の対応フロー
急な症状が出た場合、まず最初の行動はナースコールです。ボタンを押すと、看護師が速やかに病室へ駆けつけ、次のような確認が行われます。
- 意識の状態
- 呼吸の様子
- 脈拍や血圧
- 痛みや違和感の内容
この時点で緊急性が高いと判断されると、医師への連絡や応援要請が同時に進められます。患者さんが自分で詳しく説明できなくても、簡単な一言だけでも十分な手がかりになります。
モニター・検査・緊急処置の流れ
状態に応じて、心電図モニターや酸素投与、点滴などがすぐに開始されます。必要に応じて、
- 心電図検査
- 血液検査
- 血圧や酸素濃度の連続測定
が行われ、原因を素早く探ります。重篤な不整脈や再梗塞が疑われる場合には、薬の投与や電気的な処置が行われることもあります。
ICU・CCUへ移動するケースとは
状態が不安定な場合や、集中的な管理が必要と判断されたときには、ICU(集中治療室)やCCU(冠疾患集中治療室)へ移動することがあります。
ICU・CCUでは、
- 24時間体制の厳重な監視
- 専門スタッフによる迅速な対応
- 心電図や呼吸状態の継続管理
が行われます。

移動が決まると不安に感じる方も多いですが、「より安全な環境で見守るための選択」と捉えてもらえると安心です。
病院の初期対応は、患者さんを守るための“流れ”がしっかり整っています。だからこそ、症状を感じた時に遠慮せず知らせることが、何よりも大切になります。
次は、心筋梗塞の術後や入院中に起こりやすい合併症について、もう少し詳しく解説していきます。
心筋梗塞の術後・入院中に起こりやすい合併症

●ステント治療後に注意したい合併症
●長期臥床や手術後特有のリスク
●他臓器(肺・腎臓)への影響
心筋梗塞の治療がひと段落しても、体はまだ回復の途中にあります。
特に術後や入院中は、心臓だけでなく全身のバランスが崩れやすく、いくつかの合併症が起こることがあります。

これらを知っておくことで、「異変に早く気づく」「必要以上に不安にならない」両方につながります。
ステント治療後に注意したい合併症
心臓カテーテル治療やステント留置後は、血管内の状態が不安定になりやすい時期です。特に注意されるのは次の点です。
- ステント内血栓
- 再狭窄(血管が再び狭くなる)
- 出血(抗血小板薬の影響)
これらは治療直後から数日〜数週間の間に起こる可能性があり、胸の違和感や血圧変動として現れることがあります。
長期臥床や手術後特有のリスク
入院中は安静が必要な一方、体を動かさないことで別のリスクが生じることもあります。
- 肺炎や無気肺
- 深部静脈血栓症
- 筋力低下や食欲不振

特に呼吸が浅くなったり、咳が増えたりする場合は、心臓以外の合併症が関係していることもあります。
他臓器(肺・腎臓)への影響
心臓の働きが低下すると、他の臓器にも影響が及びます。
- 肺に水がたまり息苦しくなる
- 腎機能が低下し尿量が減る
- 体にむくみが出る
こうした変化は、ゆっくり進むことも多く、本人が気づきにくい点が特徴です。医療スタッフが日々の変化を細かくチェックしているのは、このためでもあります。
合併症は「必ず起こるもの」ではありませんが、「起こり得るもの」です。あらかじめ知っておくことで、異変に対して冷静に対応しやすくなります。
次は、入院中の急変を防ぐために、患者自身ができることについてお伝えします。
入院中の急変を防ぐために患者自身ができること

●症状を我慢しないことの重要性
●ナースコールを押すべきタイミング
●入院中の生活で気をつけたいポイント
入院中の管理は医療スタッフに任せているとはいえ、患者さん自身の行動や意識が、急変の予防につながる場面も少なくありません。

難しいことをする必要はなく、「気づいたことを伝える」「無理をしない」といった基本的な姿勢が、とても大切になります。
症状を我慢しないことの重要性
入院中は、「忙しそうだから呼びにくい」「もう少し様子を見よう」と我慢してしまう方が多い傾向があります。しかし、心筋梗塞の経過中は、その“少しの我慢”がリスクになることもあります。
例えば、
これらは、医療者にとっては重要な情報です。症状の強さよりも、「いつもと違うかどうか」を基準に考えてください。
ナースコールを押すべきタイミング
ナースコールは「本当に危ない時だけのもの」ではありません。次のような場面では、迷わず使って問題ありません。
- 少しでも強い不安を感じたとき
- 症状が急に出てきた、または悪化したとき
- 自分では説明しづらい違和感があるとき

早めに知らせることで、結果的に大きな処置を避けられるケースもあります。
入院中の生活で気をつけたいポイント
急変予防のために、日常の中で意識したい点もあります。
- 勝手に歩き回らず、指示された範囲で動く
- トイレや体位変換の前後で無理をしない
- 処方された薬は必ず指示どおり服用する
- 食事や水分制限を自己判断で変えない
これらは地味に感じるかもしれませんが、心臓への負担を減らす大切な要素です。
患者さん自身が「自分の体の変化に気づき、伝える役割を担っている」と考えることで、入院中の安全性は大きく高まります。
次は、看護師が実際に行っている急変予防の観察ポイントについて解説していきます。
看護師が行っている急変予防の観察ポイントとは

●バイタルサインで見ている変化
●心電図モニターのチェックポイント
●患者の「いつもと違う」を見逃さない工夫
入院中、患者さんのそばで最も長い時間をともにしているのが看護師です。
急変を未然に防ぐため、看護師は日々さまざまな視点から状態を観察しています。

これを知っておくと、「なぜ細かく確認されるのか」が理解でき、安心感にもつながります。
バイタルサインで見ている変化
看護師が定期的に測定している血圧・脈拍・体温・呼吸数は、急変の兆しを捉える重要な情報です。単に数値を見るだけでなく、
- 前回との違い
- 急な上下動がないか
- 症状と一致しているか
といった“変化の流れ”を重視しています。小さな数値のズレでも、背景に心臓への負担が隠れていることがあります。
心電図モニターのチェックポイント
心筋梗塞で入院している場合、多くの方が心電図モニターを装着しています。看護師は、
- 脈のリズムが乱れていないか
- 急に速く、または遅くなっていないか
- 波形に異常な変化が出ていないか
を常に確認しています。異常があれば、症状が出る前でも医師に報告し、早期対応につなげます。
患者の「いつもと違う」を見逃さない工夫

数値だけでなく、表情や会話、動作も大切な観察ポイントです。
- 反応が鈍くなっていないか
- 表情が暗く、苦しそうではないか
- 動作がいつもより遅くなっていないか
こうした変化は、患者さん本人が気づいていないことも多くあります。だからこそ、違和感を感じた看護師は、些細なことでも確認を重ねています。
次は、心筋梗塞で入院中に死亡リスクが高まる要因について、現実的かつ不安を煽りすぎない形で整理していきます。
心筋梗塞で入院中に死亡リスクが高まる要因

●年齢・基礎疾患との関係
●発症から治療までの時間の影響
●再発・合併症が重なるケース
このテーマに触れると、不安を強く感じる方も多いかもしれません。
ただ、死亡リスクについて正しく知ることは、「怖がるため」ではなく、「避けられるリスクを減らすため」にとても大切です。
実際には、入院中だからこそ守られている命も多くあります。

その前提を踏まえて、医学的に知られている要因を整理します。
年齢・基礎疾患との関係
心筋梗塞の重症度は人それぞれで、もともとの体の状態が大きく影響します。特に次のような背景がある場合は、注意深い管理が必要とされています。
これらは心臓にかかる負担を増やし、回復までに時間がかかる要因になります。
発症から治療までの時間の影響
心筋梗塞は「時間との勝負」とよく言われます。

発症から治療開始までの時間が長いほど、心筋へのダメージが大きくなり、その後の経過に影響することがあります。
ただし、すでに入院して治療を受けている段階では、
- 早期発見
- 迅速な処置
- 継続的な監視
が行われているため、自宅療養中よりもリスク管理は格段に整っています。
再発・合併症が重なるケース
再梗塞や重い不整脈、感染症などが重なると、体への負担は一気に増します。特に、
- 症状を我慢して伝えなかった
- 急変のサインに気づくのが遅れた
といった場合、対応が後手に回ることがあります。
逆に言えば、「違和感を早めに伝える」「医療者と情報を共有する」ことで、避けられるリスクも多いということです。
次は、医療者の立場だけでなく、**体験者としての視点から“入院中の急変とどう向き合えばよいか”**をお話しします。
体験者として伝えたい「入院中の急変と向き合う心構え」

●実際に急変を経験して感じたこと
●不安を抱えたままにしないために
●医療者と上手に連携するコツ
ここまで医学的な視点でお伝えしてきましたが、最後に少しだけ、体験者としての立場からお話しします。
入院中に急変を経験すると、「なぜ自分が」「もう助からないのでは」と、強い不安に襲われることがあります。

けれど、その不安を一人で抱え込む必要はありません。
実際に急変を経験して感じたこと
私自身、手術後の入院中に心筋梗塞を併発し、「入院しているのに、こんなことが起こるのか」と大きなショックを受けました。
ただ振り返って思うのは、急変が起きたからこそ、
という現実もあったということです。入院中は、決して一人で闘っているわけではありません。
不安を抱えたままにしないために
不安そのものが、体に負担をかけることもあります。
- 「こんなこと聞いていいのかな」
- 「また急変したらどうしよう」

そう感じたときこそ、医師や看護師に言葉にして伝えてみてください。
不安を共有するだけで、心が少し軽くなることもあります。
医療者と上手に連携するコツ
医療者との関係は、「任せきり」でも「我慢」でもなく、協力関係に近いものです。
- 違和感は早めに伝える
- 分からないことは遠慮せず聞く
- 不安な気持ちもそのまま言葉にする
それだけで、医療者はより的確にサポートしやすくなります。
入院中の急変は怖いものです。でも、正しい知識と周囲の支えがあれば、必要以上に恐れる必要はありません。
「一人ではない」「守られている環境にいる」──そのことを、どうか忘れないでください。
「総括とまとめ」

🔵 心筋梗塞で入院中に起こり得る急変の原因やサイン、病院での対応について解説
🔵 急変の本質は「突然起こるもの」ではなく、小さな変化の積み重ねであることが多い
🔵 違和感を我慢せず伝えること、ナースコールを早めに使うことが大きな学びかも
🔵 医療者の観察と患者自身の気づきが合わさることで、より安全な入院生活につながる
🔵 何も行動しないまま不安を抱え続けるより、知識を持つことで気持ちが軽くなることもある
🔵 正しい理解と周囲との連携が、安心して回復へ向かう未来への一歩になる
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